片岡仁左衛門、熟成35年の夢叶えた 喜寿で“親子”獅子(スポーツ報知)

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出典元:スポーツ報知

片岡仁左衛門(77)が、東京・歌舞伎座11月公演「吉例顔見世大歌舞伎」(1~26日)で孫の片岡千之助(21)との共演で「連獅子」に登場する。喜寿で親獅子を演じるのは本公演最高齢となる。今回の出演は約35年間温めてきた夢だという。特に今年著しい活躍を見せた仁左衛門。坂東玉三郎(71)との名コンビで度々チケットを完売させ、コロナ禍で冷え込む歌舞伎界を引っ張った。一方で5月には兄、片岡秀太郎さん(享年79)を見送る別れもあった。「連獅子」の思いを語るとともに、走り続けた1年を振り返った。(内野 小百美)

 35年間、温めてきた夢が叶(かな)おうとしている。原風景がある。17代目中村勘三郎さんが喜寿記念(当時76歳)として息子の5代目勘九郎さんと「連獅子」(1986年、歌舞伎座)を踊っている。仁左衛門は当時まだ40代。憧れを持って見入った。「その時にね、もし自分が歌舞伎座で連獅子が踊れるような役者になっていたら、自分も頑張ってみたい。その時からそう思ってたの。息子(片岡孝太郎)と踊るつもりだったけれど、彼は女形。だから孫とね」

 「歌舞伎座で連獅子を踊れるような役者」とは、主役を張れて名実ともに評価され、第一線でバリバリ活躍していることを意味する。親の子に対する厳しさ、愛情が描かれる「連獅子」。仁左衛門は豪快な毛振りや跳躍など、アクション的な動きにばかり注目が集まるのを危惧する。

 「掲載写真もそういうのが多いけれど、役者はスポーツ選手じゃないからね。親子の情とともに、(中国の)清涼山の神聖さをどこまで伝えられるか。描き出される光景を想像してもらえるかどうか。前半部分はお客さんにとっては退屈かもしれない。でも実はそこが一番大事なんだよね」

 親獅子は仔獅子を厳しさと覚悟を持って崖から突き落とす。そしてはい上がってくるのを祈るようにして待つ。「獅子は架空の動物だけどイメージするのは百獣の王ライオン。オスのライオンって狩りにも行かない。余裕、ゆとり、大きさも大事に。毛振りは互いに動きを合わせる必要は全くないと思うね」。千之助とは歌舞伎座建て替え中の2011年(新橋演舞場)、14年(歌舞伎座)以来、7年ぶり3度目となる。21歳の孫も確実に成長している。高みを目指し、ただ追い求めるのは「連獅子」の神髄だ。

■玉三郎との共演で度々完売の嵐  

 今年の歌舞伎界は仁左衛門抜きに語ることはできない。コロナ禍で客足が鈍る中で4、6月「桜姫東文章」、9月「東海道四谷怪談」をチケット完売にさせた。コンビを組んで半世紀になる玉三郎とのダブルスター共演に観客は酔った。しかし本人は冷静だ。「役者として最高の喜びです。でも完売とはいっても、今は本来の客席数の半分に制限されているからね」。玉三郎とは「今の状況、これからの歌舞伎のことを話しますよ」。その方向性に関しては同じだ。

 この2人、夜を徹して芝居について熱く語り合うような関係ではない。舞台を降りれば、交流はないのだという。「ほとんど会わないし、一緒に食事した記憶もないのね。本当に不思議やね。お互いがお互いの芸を認め合いながら、その一方で認めない、譲れない部分もあるからね」。なれ合い的なものが一切ない。この向き合い方、距離感こそが新鮮味を失わない理由なのかもしれない。

 しかし逆の見方をすればこの50年間、歌舞伎界で2人と肩を並べるコンビが出てこなかったという現実を意味する。仁左衛門は「コロナ後」を見据えている。「一度遠のいたお客様に、どうすれば戻ってきてもらえるか。大変ですよ。かつて満員で補助イスが出て、逆に補助イスが出てないと『今日はすいてるね』という時があった。だから再びそういう時代に。もういっぺん、戻したいんだよね」。普段は目尻が下がっている仁左衛門の眼光が、このとき鋭く変わった。

 5月には兄で女形として人間国宝でもあった秀太郎さんを失った。長男が片岡我當(86)で仁左衛門は三男になる。「貴重な女形で教え上手。上方歌舞伎など、教えることに情熱を燃やしてましたから」といい、「とにかく若い頃は兄(秀太郎)の後ろにくっついて歩いた。お茶屋遊びを教えてくれたのも兄でした」と振り返っていた。

 【吉例顔見世大歌舞伎の演目と主な出演者】

 ◇第1部「神の鳥」(片岡愛之助)、「井伊大老」(松本白鸚)

 ◇第2部「寿曽我対面」(尾上菊五郎、坂東巳之助)、「連獅子」(片岡仁左衛門、片岡千之助)

 ◇第3部「花競忠臣顔見勢(はなくらべぎしのかおみせ)」(尾上右近、市川猿之助)

 ◆名コンビ誕生 1971年6月の「花形歌舞伎」(新橋演舞場)で「播州皿屋敷」「お染の七役」での共演が始まりとされる。仁左衛門の芸名は当時、孝夫だったため「孝玉コンビ」と呼ばれるようになった。

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