【ボクシングコラム】「心にはブルース・リーの哲学がある」──ユーリ阿久井政悟の戦い方<私的考察編>(BBM Sports)

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出典元:BBM Sports

ボクシングにおけるスピードとは、リズムとは、テンポとは──。さる1日のV3戦では苦闘を強いられたWBO世界スーパーフライ級チャンピオン井岡一翔(志成)。だが、彼はそれらを巧みに操る“達人”であることに変わりはない。そしてその戦いぶりの影響も受け、独特の“間”を駆使して会心の勝利を飾った男がいる。日本フライ級チャンピオン、ユーリ阿久井政悟(26歳=倉敷守安)。7月21日、後楽園ホール。“パワー”対“スピード”と言われたホープ桑原拓(26歳=大橋)との大注目の一戦で、最終10回、強烈な右をぶち込んで完全KO防衛を果たした。その戦いぶりを観察した記者の、極私的考察。

【写真】阿久井vs.桑原ハイライト

文_本間 暁 写真_菊田義久(試合)

 バルコニーの記者席から試合を眺めた。

 初回にチャンピオンが右カウンターで倒した。3回に左フックの相打ちで勝った挑戦者が王者をフラつかせた。それらはもちろん、ハイライトのひとつである。だが、試合中、ずっと気になっていたことがあった。それは、いわゆるワンツー、左ジャブから瞬時に右ストレートへつなぐコンビネーションを、試合中ずっと、10ラウンドに至るまで、チャンピオン阿久井が打っていなかったように感じていたことだ。

 記者ももちろん興奮する。あんな結末を見せられればなおさらだ。元々、試合直後は頭の中で整理できていないタイプ。だから、記者たちが囲む会見で「ワンツー、全然打ちませんでしたね」と、極めて漠然としたひと言しか発することができなかった。

 すると「最後に打ったじゃん」と、他の記者から突っ込みが入った。たしかにそう。あのKOパンチは紛れもなくワンツーだ。けれども、言いたいことはそういうことじゃあないのだ。が、それを補足する言葉が続いて出てこない。

 だが、当の主役はどうやらこちらの言いたいことを理解してくれたようで、「そうですね。打ちませんでしたね」と返してきた。リング上で散々、0コンマ何秒の駆け引きを演じてきた男だ。頭も体も瞬時に反応する。“チャンピオン”という肩書を持つ者は、やはり凄い。

「う~ん、ノーモーションの右を使いました」。苦笑いしながら、端的にひと言でまとめてくれた。

 おそらく、このくだりに関しては、新聞記者陣は求めていない。われわれ専門誌記者とは必要とするもの、興味が異なるから。だから、それ以上広げるのはやめた。会見後、後日電話で話したい旨を伝えた。彼はあっさりと承諾してくれた。

 なんてことのない、どうでもいいことかもしれない。でも、こういうことが引っかかると、いろいろと考えだしてしまう。帰宅して、頭の中に残しておいた映像を取り出して、それを見る。すると、ワンツーから始まった再現が、様々なやり取りを浮き彫りにし始めた。気がつくと朝。また、眠れなかった。でも、記者である前にファンである身を考えれば、なんとも幸せな時間だ。

 あの人は、この試合をどう見ただろうか。ふと、考える。元世界3階級制覇王者、八重樫東。彼の現役時代から、自身の試合だけでなく、他の様々な試合について抱いた感想をぶつけ合ってきた。彼の感性が、当方のボクシングを見る目を養ってきてくれた。そう言っても過言ではない。さらに、挑戦者をよく知る人物でもある。すると、程なくして偶然にも彼から電話がかかってきた。

 一晩考えて整理した、自分なりの見立てを大まかに話した。連打の合間に生じる“間”、そこを突くという阿久井のテクニックについて、意見はおおよそ一致した。以下はその“見立て”である。

 スピード勝負はしない──。確固たる強い意志を感じた。
 昨年末に井岡一翔(Ambition、現・志成)が田中恒成(畑中)と対した際の思考、仕掛けた戦術・戦略に通ずると思えた。

 速く動かれ、速く攻められる。そうすると、人はどうしても同じように速く動き、さらにそれを上回る速い攻撃を仕掛けていきたくなる。対抗心というよりも、それが人として、動物としての本能であるからだ。しかし、それこそが“思うつぼ”。相手のペースに引き込まれるということである。
 その勝負を我慢する、無視する。言葉にすれば、実に簡単。だが、これは並大抵のことでは実現できない。身近なことを例に挙げるとわかりやすいかもしれない。

 駅の階段の昇り降り。誰かの革靴やハイヒールがカツカツと大きな音を立てる。気がつくと、その音に合わせて自分も昇り降りしているときがある。「むむ、いつの間にか合わせてしまった」と、主導権を握られた自分を恥じてみたりする。
 逆に、自分が主体のときもある。後ろ、あるいは横を昇る人(降りる人)が、いつの間にか自分と同じリズムで動いていることがある。なんとなくそれが気持ち悪いので、左右どちらかの足の運び、着地をほんのわずか早めたり遅めたりしてみる。と、彼、もしくは彼女の足運びが途端にリズムを乱す。それまではわざとこちらに合わせていたわけではなく、何気なく勝手に体が反応し、知らぬ間に歩調が合っていただけ。だから、リズムが狂うほうもしかり。本人は、なぜリズムが狂ってコケそうになったのか、きっとわからないはず。みんな、そんなことを考えながら行動しているわけではないからだ。

 以前の取材の際、前OPBFウェルター級チャンピオン長濱陸が「スローな動きに弱い生物の本能」について語ってくれた。

「虫は速い動きには反応するけれど、遅い動きには対処できない」。子どものころのセミやトンボ捕りを思い出させてくれ、実にわかりやすく解説してくれた。これはなにも“子どもの世界”の話だけではない。いまでもそう。ハエや蚊を捉えるとき、速い動きで捕まえようとするとどうしても逃げられるが、ゆっくりと近づいていくと奴等は微動だにせず、いとも簡単に捕まえられることが往々にしてある。それを長濱は「生き物はスローな動きには気づかないもの」と言って、サイドブレーキを引き忘れた車を例としてさらに挙げた。つまり、ブレーキのかかっていない車が、坂道を急激に下りていけばびっくりして誰もが気づくが、サイドブレーキをかけ忘れた車の、ほんのわずかの移動には気づかない──。それが人間、生物の性なのだ、と。

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