ミュージシャンのデーモン閣下が7月24日に放送されたNHK「クローズアップ現代+」に出演し、白鵬が負けた際に喜ぶ一部の相撲ファンに対し「イチロー選手がメジャーリーグで何かやったときに、ブーイングが起きたら悲しいわけですよね」と苦言を呈した。
【BuzzFeed Japan / 徳重辰典】
24日の番組では「白鵬が語る 史上最多1050勝への道」として、大相撲名古屋場所で通算1050勝の最多記録を樹立した白鵬の特集が組まれた。
好角家として知られゲスト出演したデーモン閣下は、白鵬の1050勝について「遠い異国からやってきたやせっぽちの少年の血と涙と汗の結晶でしょう。数字だけではない、偉大なものを秘めている記録」と賞賛。
一方、立会いの変化など白鵬の勝ちにこだわる姿勢が横綱らしくないといわれることについては「今、白鵬にとって大事なのは勝ち星なので、そういう点では勝ちにこだわる相撲をとる年齢になったのはしょうがないかな。逆にいうといろんな技をもつ白鵬を凌駕できない若い力士がだらしないわけで、そこは一歩抜きん出ている」と話した。
八百長騒動で人気が低迷した時期も大相撲を横綱として支えてきた白鵬だが、相撲人気が戻ってきたころから、相手となる日本人力士へ大声援が送られることが増えてきた。
その一例として番組では2013年11月の大相撲九州場所で、当時大関の稀勢の里が白鵬を破った際、場内から万歳コールが上がった映像が流れた。
VTRで白鵬はこうしたファンの応援について「応援のしかたというのは来ている人たちの思いがあるから」と語った後、少しの間を置き「双葉山関の言葉を思い出すんですよ。『勝って騒がれる力士ではなく負けて騒がれる力士になりなさい』。いいように、いいように考えていくしかない」と話した。
VTRからスタジオへ映像が戻ると、デーモン閣下は次のように発言した。
「感謝しなければならないのは日本人の方でしょうと思う。あれだけ相撲界が苦難の時に、一生懸命屋台骨を支えて頑張ってきた白鵬にファンはああいう態度かよと。我輩、日本人ももうちょっとね、了見の広い気持ちで白鵬のこと見てやらないといけないと思う」と白鵬に冷たいとも取れる態度をする一部の相撲ファンに苦言。
かつての大横綱・北の湖はその強さから“憎らしいほど強い”とまで言われたが「北の湖がいくら強かったからといって、負けて万歳は出ませんでしたよ。イチロー選手がメジャーリーグで何かやったときに、ブーイングが起きたら悲しいわけですよね。そういうことを思って、相撲を見ていかないといけないんじゃないかな」と語った。
このデーモン閣下の言葉には、番組を見ていた人から「よくぞ言ってくれました!」「閣下ほんとに素敵」など賞賛が数多く寄せられた。
デーモン閣下はただ白鵬に甘いわけではない。
2014年の名古屋場所で優勝を決めた白鵬と番組で共演した際、立会いで変化した豊真将にイラ立ち、勝った後も睨みつけた姿勢に言及し「横綱白鵬どういってもみんな勝てないから、そりゃあ張りに行ったり、変わったり、足蹴りに行ったり、みんなしてくるでしょうよ。いちいち腹を立ててちゃ…。双葉山はそんなことじゃ腹立てなかったんじゃないかな?」と苦言を呈している。
悪魔にとって人間の国籍などは関係ない。一人の力士としての白鵬を温かく、そして厳しく見つめていることがわかる。