グラウンドを支配する「緊張」 早大ラグビー部マネジャー 大学日本一への思い(スポニチアネックス)

出典元:スポニチアネックス

緊張。東京都杉並区上井草にある早大ラグビー部の施設には、その2文字が揮毫された大きな紙が、クラブハウスエリアとグラウンドエリアを分ける金網ゲートに掲示されている。書いたのは、副務を務める中谷百音(もね)さん。「丸尾組」世代の1人として、天理大との大学選手権決勝で、4年間のマネジャー生活に別れを告げる。

 入口の「緊張」と、ウエートトレーニング室入口にある「天理」。後者はその週の対戦校によって変わるが、いずれも大きな白紙に堂々たる筆使いでしたためられている。「多い時で3回くらいは書き直す。1、2時間は掛かるイメージです」と中谷さん。マネジャーとして日々雑務に忙殺され、部員と気軽に言葉を交わす機会は意外に少ないという。だからこそ「選手に“頑張って”とか言う機会がないので、字に思いのようなものは込めているつもり」だという。

 高校時代もラグビー部のマネジャーを務め、やりがいを知った。17年4月、早大入学とともに、ラグビー部の門を叩く。書道は小学生の頃にかじった程度だというが、日々の事務仕事で膨大な書類を処理していたところ、先輩から「字がうまいね。書いてみる?」と誘われた。当時は基本的に、主務が書いていたという「緊張」ある仕事が始まった。

 2年秋は留学のため不在だったが、それ以外の3シーズンは、試合ごとに対戦校名を書いた。特に苦戦したのが、字画の多い「慶應」。昔の書道セットを引っ張り出し、自宅で何度も練習を重ねてから本番に臨むその流れは、部員と全く変わらない。出来、不出来はあるものの、「毎日部員が目にするもの。私なりに、みんなを後押しできるような、気持ちが引き締まる字であればと思い書いている。書くときの緊張感にこだわっている」と、本気で向き合ってきた。

 コロナ下の今シーズンは、「緊張」の掲示にも少し変化があった。例年、対抗戦中盤の帝京大戦から掲示を開始するが、その後は一度も外さず、シーズン終了を迎えていたという。今季は委員会と呼ばれる丸尾主将を中心とするリーダーグループの話し合いで、メリハリを付けるため、試合間隔が長い期間やオフの日は外した。ただ漫然と張り出しても効果はない。外界と修練の場を分け隔てるため、それぞれの選手が気持ちのスイッチを入れるために、その2文字はある。「1年の頃は、どれだけ選手に影響があるか分からなかった。今年はそれが見えたので、緊張感があります」。務め上げて良かったと、心の底から思えた。

 自分たちの世代で「荒ぶる」をつかもうと、身を粉にして役割を全うした。「試合に出られないメンバーを含め、全員で苦楽を共にしてきて、正直、楽しいことだけではなかった。私自身もいろいろ悩みながら学んだ4年間だった。マネジャーとして準備をやり切って、あとは選手を信じたい」。日々の練習に「緊張」をもたらした中谷さんは、スタンドから、その瞬間を見届ける。(記者コラム・阿部 令)

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