出典元:スポーツ報知
年内で活動休止する嵐と、ゆかりのある関係者が語る「ワタシと嵐」。今回は二宮和也(37)の主演映画「浅田家!」(2020年10月2日公開)でメガホンを執った中野量太監督(47)が登場。「俳優・二宮和也」の魅力や期待する将来像を聞いた。
2005年のドラマ「優しい時間」を見て「いい俳優だな」と、ひと目ぼれしました。それ以来、僕にとってニノはアイドルではなく、俳優です。「浅田家!」では、だらしないところもあるけど、どうしても憎めない、何か応援したくなる。そんな浅田政志をうまく演じてくれた。
僕が望んだことにプラスして、自分の最高レベルの演技を見せてくれた。感覚が豊かで鋭い。無言でも表情だけで芝居ができる。感性が豊かだから、あんな表情ができるんでしょうね。それに柔軟だから、誰とやってもかみ合う。下手な人って、一本調子だから合わせられない。でも、ニノはその場の空気感、タイミング、リズム感を瞬時に把握できる。天性のものがある。
勝負どころの集中力にも驚かされた。涙を流す場面で最初は涙ぐむ予定だったけど、「物語の転換部分だから、流れた方が効果的ですよ」って伝えたら「じゃあ、やってみます」と。2分くらいの長回しのワンカット。涙が流れているところから始めることもできたけど、ずーっとカメラを回していて、最後に寄ったら涙をポロッと。見事でした。
去年の3月から4月、約2か月間の撮影でクランクアップは雨が降っていて、みんなクタクタ。しかも翌日が九州で嵐のコンサート。撮りこぼしは許されない。終わったら、自然とハグしてくれて達成感があふれましたね。僕一人が登壇予定の舞台あいさつにサプライズで来てくれたこともあった。「監督を喜ばせたい」と言ってくれてね。あれはうれしかったな。「さあ、俺についてこい!」という感じじゃないのに、座長なんですよね。
「浅田家!」の撮影前、初めて会ったのは東京ドーム公演の控室。それまで俳優だと思っていたから「何だ、このスーパーアイドルは!」ってキラキラ感に圧倒されて、緊張したのを覚えてます。「さっきまで5万人にキャーキャー言われていた人が目の前にいる!」って。格好良すぎ。初対面であれはずるい。ファンのすごいパワーを受け止めていることも思い知らされた。
今後は俳優として主役にこだわらず、2番手でも3番手でも、もっと脇の役もやって日本映画を支えてほしい。ただいる、みたいな役もできるし、父親役や犯罪者みたいな役もできるはず。助演のニノをもっと見てみたい。いつか、またオファーを出すので、断らないでくださいね。絶対にニノの魅力を引き出す役でオファーします。今度は僕が喜ばせるので、待っていてください。(映画監督)
◆中野 量太(なかの・りょうた)1973年7月27日生まれ。京都府出身。47歳。助監督やテレビディレクターを経て2012年の自主制作映画「チチを撮りに」がベルリン国際映画祭正式招待。16年の商業映画デビュー作「湯を沸かすほどの熱い愛」が映画賞を総なめに。19年に第2作「長いお別れ」が公開。独自の視点で家族を描き続けている。