出典元:スポーツ報知
日韓W杯から20年が経過し、大きく進化したと言われる日本サッカーだが、まだまだ我々は“サッカー後進国”だった。
国立競技場で行われた6月6日のブラジル戦。スタンドにはブラジル代表や、ネイマールが所属するパリSGのユニホームを着たファンの姿が目立った。試合前の選手紹介では、日本代表の選手たちと同じかそれ以上に、FWネイマールやMFカゼミロに大歓声が沸き起こった。
DF板倉から何度も激しいチャージを受けたネイマールが、ファウル判定を誘うように転んでも、スタンドからはブーイングのひとつも起こらなかった。もし南米や欧州で同じ状況が起こったら、ネイマールは物を投げ込まれるほどのブーイングを受けるのでは…。そんな思いで試合を見つめた。
日本は0―1だが、実力差を見せつけられるような敗戦を喫した。それでも試合後、ブラジルの勝利を祝福するかのようなスタジアムの空気に、日本代表の選手たちの中には、やり場のない怒りや無力感を感じていたと聞く。GK権田は「見に来ている人は、日本人でもブラジルを見に来ていた。悲しかった。ブラジルを応援している日本人もいた。イタリア―ブラジル戦で、イタリア人はブラジルを応援しない。成長するために、ホームで日本が勝つために全員が応援するような文化をつくりたいと思った」と正直な思いも打ち明けていた。
2002年の日韓W杯で日本が盛り上がっていた際、巷ではベッカムヘアの大流行とともに、各国ユニホームをまとった日本人であふれた。当時大学生の私も、当時購入したのはブラジル代表のユニホームだった。20年が経過しても、日本の先を行く世界のサッカーに対するあこがれはいまだに大きいし、今回のブラジル戦でもスター選手のプレーに心躍ったことも事実だ。ただ欧州でプレーする選手が大半を占める今の日本代表からは、それではいけない、自分たちも同じ舞台で戦っているのだから、という思いが、取材の中でも強く感じられるようになった。
選手たちが成長していくとともに、メディアや、サポーターの目も変わっていくべきだ。日本代表は、カタールW杯で初のベスト8以上、という目標を掲げている。選手たちが高みを目指すためには、その周りでサッカー文化を作り上げていく我々も、成熟していく必要がある。ブラジルも、ドイツも、スペインも、憧れではなく同じ土俵で戦う倒すべき相手―。まずはその意識が浸透することが、日本サッカーにおいて次のステップにつながるのではないだろうか。(サッカー担当・金川誉)