出典元:BBM Sports
玉鷲(押し出し)照ノ富士
5日目を終えて全勝は碧山と一山本の2人だけ。6日目はこの2人の対戦が組まれ、碧山が立ち合いから突き起こして攻め込み、土俵に詰まった一山本をタイミングよく叩き込んで単独トップに立った。
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碧山は「6連勝は初めてのことじゃないし、まだ6日目が終わっただけだから」とそっけない。碧山の初日からの6連勝は令和2年春以来で、平成29年名古屋では7連勝している。いずれも終盤に息切れしており、このままいくとは思えない。
優勝争いの中心は照ノ富士で、この日の玉鷲戦が前半のヤマと思って見ていたら、またも波乱が起きてしまった。
立ち合い、照ノ富士は右から張ったが、玉鷲は突っ張らず、頭から当たるとワキを固めて左ハズ、右おっつけの形で前進。照ノ富士はズルズルと下がり、土俵際も踏ん張ることができず、あっさりと土俵を割った。まるでぶつかり稽古のような相撲だった。
玉鷲はこれで照ノ富士から3場所連続の金星獲得。これは昭和39年九州から翌年の春場所にかけて大豪が栃ノ海から記録して以来、57年ぶりのこと。
連日の殊勲となった玉鷲は、「よかったです。横綱に勝ててうれしい」と笑顔を見せる。照ノ富士の右張り手に対しては、「張ってくると思っていたので」と想定内。「止まったら負けちゃうので」と構わず前に出た。
ここまで5勝1敗と優勝争いにも顔を出すが、「まだこれから長いので、自分の相撲をやり切りたい」と気合を入れる。場所前は国技館教習所で行われた合同稽古に初めて参加。久しぶりに関取衆と稽古ができて充実している。
部屋には幕下の玉正鳳と入門から1年の新弟子2人しかいないが、「親方が稽古方法を考えてくれている」と語る。その稽古法とは、巡業の子供の稽古のように3人掛かりで玉鷲を攻めるというもの。玉鷲は「攻められても慌てなくなった」と効果を口にした。
優勝争いは押し相撲相手に不安があった照ノ富士が弱点を露呈してしまい、この先の展開がまったく読めなくなってきた。
文=山口亜土