出典元:スポーツ報知
◆第27回NHKマイルC・G1(5月8日、東京競馬場・芝1600メートル=良)
3歳マイル王を決めるNHKマイルC・G1(芝1600メートル)は8日、約2万5000人が見守る東京競馬場で開催された。勝者はレース史上未勝利の18番枠から豪快に差し切った4番人気のダノンスコーピオン(川田)。G1初制覇に導いた鞍上の川田将雅騎手(36)=栗東・フリー=にとっては、古巣の安田隆厩舎で3つ目のG1タイトル。1番人気(セリフォス=4着)は今年のG1で7連敗を喫し、3着には18番人気のカワキタレブリーが続いたため、3連単は153万2370円の波乱決着となった。
【データで見る】ダノンスコーピオンの血統、戦績
スタンドを埋め尽くす観客のざわめきを誘発したのは大外枠のダノンスコーピオンだった。残り200メートルで馬なりのまま先頭争いに加わると、川田からこん身の右ステッキが放たれる。「なんとかしのいでくれと思いながらのゴールでした」。外から迫る2頭の気配を感じながら先頭でゴールを駆け抜けたが、ターフビジョンに映る自身の姿を見て勝利を確信した。
無観客の時期を乗り越え、制限が緩和された場内には2万5051人が詰めかけた。「たくさんのお客さんの前で久しぶりにこういう気持ちいい時間を過ごさせていただきました。新馬の段階からここが目標になる馬だと思っていました。きっちり勝ち切ることができてホッとしています」。ウィニングランの馬上からスタンドに向けて、川田は何度もおじぎを繰り返した。
96年の創設以来、未勝利だった18番枠の“ハンデ”をはね返した。「ポテンシャルを感じる馬でしたが、体の成長が追いついていなかった」と振り返る川田だが、前走のアーリントンCは1分32秒7のレースレコードV。軌道に乗りながら、6戦目で3歳マイル王の座を射止めた。
同厩舎でG16勝の父ロードカナロアは4歳秋の12戦目でG1初制覇。晩成型だったが、スコーピオンは3歳にして父をしのぐ完成度の高さを見せる。安田隆師は「落ちついていて、競馬で100%の力を出してくれる」と父譲りの性格を強調すれば、川田も「さらに良くなるのは間違いないです」と今後に期待を膨らませる。
父が唯一勝ったマイルG1は5歳春の安田記念。「(参戦は)あるかもしれません」と視野に入れる安田隆師にとっては、かつての弟子と自身が手掛けたカナロアの子供で父子制覇の夢も膨らむ。偉大な父さえ成し得なかった3歳での古馬混合G1制覇も、嵐が吹き荒れる今年のG1シリーズなら起こりえるかもしれない。(恩田 諭)
◆ダノンスコーピオン 父ロードカナロア、母レキシールー(父スリゴベイ)。栗東・安田隆行厩舎所属の牡3歳。北海道新ひだか町・ケイアイファームの生産。通算6戦4勝。総収得賞金は2億1674万3000円。主な勝ち鞍は22年アーリントンC・G3。馬主は(株)ダノックス。