稀勢の里、父助言の断食で肉体改造 237日ぶりの白星(日刊スポーツ)

出典元:初日を白星で飾った稀勢の里は懸賞を手にほっとした表情を見せる(撮影・小沢裕)

<大相撲秋場所>◇初日◇9日◇東京・両国国技館

8場所連続休場から、進退を懸けて臨んだ横綱稀勢の里(32=田子ノ浦)が、白星発進した。左を差す得意の形で、東前頭筆頭の勢を寄り切る完勝。本場所の白星は1月の初場所2日目で北勝富士に勝って以来、237日ぶり。4連敗中と鬼門だった初日としては、休場前最後の皆勤で、優勝した昨年3月の春場所以来、実に546日ぶりだった。断食による肉体改造などにも着手し、復活への道を探り続けている。

【写真】勢の攻めを耐える稀勢の里

進退の懸かる場所で、稀勢の里は歯を食いしばって前に出続けた。立ち合いは左胸に、勢に頭からぶつかられた。8場所連続休場の主な要因は左大胸筋損傷。左胸に力が入らず、生命線の左が生きなかった。だがこの日は、全身でぶつかってきた勢に押されない。むしろ左を差してまわしを取り、相手もろとも土俵下まで落ちるほど、鋭い出足で一気に寄り切った。間違いなく稀勢の里は強かった。

割れんばかりの大歓声が両国国技館を包んだ。それでも目を閉じ、静かに勝ち名乗りを受けた。支度部屋に戻っても、笑顔すら見せなかった。「まあ、集中してやりました。やることをしっかりやって、自分の力を出すだけです」。朝稽古は完全非公開。勢とは取組前まで15勝1敗ながら、最後に対戦した昨年7月の名古屋場所では敗れ、その後、途中休場に追い込まれた。何より横綱昇進後、最初の場所となった昨年春場所で勝って以降、4連敗中と苦手の初日。過度な緊張を避け、平常心を保つことだけを取組前も取組後も努めた。

肉体も改造した。左大胸筋の損傷について、父貞彦さんは「当初は30%の力も出なかった。今は70%ぐらいには戻った」と明かす。筋力を戻すために、取り入れたのが断食だった。元アマチュアボクサーの貞彦さんは「けがを治すには強い細胞が必要。細胞から生まれ変わるには断食が最適」と、本などを使って科学的な根拠を示し、稀勢の里に断食の必要性を説いた。体を大きくするのが仕事の力士には珍しく、約1カ月に1日、ほぼ何も食べない日をつくり、その後も段階的に食事量を戻す手法を取り入れた。体重増による体への負担増の解消も兼ねた。8場所連続休場が始まった昨年5月の夏場所で184キロだった体重を、じわじわと176キロまで落とした。

けがに強い、回復力のある体を土台に、7月末から約1カ月続いた巡業を昨秋以来、完走した。復活できる下地はあった。それでも稀勢の里は「今日は今日で明日は明日」と浮かれない。年6場所制となった1958年以降の横綱として、歴代最長の休場明け。奇跡の復活へ、大きな第1歩が刻まれた。【高田文太】

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